イジワル副社長と秘密のロマンス
千花に絡んでいたふたりが、俺ににじり寄ってきた。思わず、足が下がる。
「夏休みだから、遊びに来たの?」
「そう」
「ねぇねぇ、いつまでいる予定?」
「夏休みが終わるころまで」
再び「そうなんだー」と呟くも、女二人は俺から目を逸らさない。
話しを続けたそうな空気に耐えきれなくなって、俺は周囲を見回した。昴じいさんの車は見当たらない。早くここから離れたいのに、こんな時に限って遅れてくる。
「あのね、樹君」
そっと腕を引かれ視線を落とすと、千花が申し訳なさそうに話し出した。
「牧田さんの代わりに、私が迎えに来たの」
「代わり?」
「今朝ぎっくり腰になっちゃったみたいで、代わりに私が。30分くらいかかるけど家まで歩く? それともバスに乗る?……次のバス、30分くらい待つと思うけど」
丁度、駅前の通りを走り抜けていったバスを見ながら、千花が困り顔で待ち時間を追加する。
「同じ時間なら、歩く」
きっぱり言い切ると、女二人が「えー!」と声をあげた。
「千花の家の方なんでしょ? ここからけっこう遠いじゃん。疲れるよ!?」
「30分くらい、話してたらすぐだよ! バスにしなよ!」
「歩く。時間の無駄だから」