イジワル副社長と秘密のロマンス

けれど夕方、ユメの散歩に出ると彼女はひょっこり現れるから、実質、俺は毎日のように千花と顔を合わせている。

散歩の時間は、千花との時間。

すっかりそんな気持ちになっていた時、またあの男が俺の目の前に現れた。



牧田家を出て、坂をおりていく途中、ユメがぴくりと身体を揺らした。ユメの視線の先は千花がいた。

尻尾を振って、駆け出しそうになるユメを、俺は制止する。そこには千花だけじゃなく、駅で俺を睨みつけてきたあの短髪の男も立っていたからだ。

ふたりは向き合う形で立っているけれど、雑談をしている雰囲気ではない。千花は俯きがちで、男は必死に何かを話しかけている。

横顔を見る限り、千花は困っていた。大きく首を横に振っている。けど、男は諦めきれない様子で千花の腕を掴み、話しかけている。

口説いてる? 一度そんなことを思ってしまえば、口説いているようにしか見えなくなってきた。

邪魔したい。彼女に触れているその手を、払い落としたい。


「ユメ。千花と遊んできなよ」


一言そう告げると、俺を見上げたユメの瞳がきらりと輝いた。「Go」と呟くと同時に、持っていたリードを離す。

俺の望み通り、ユメは走り出した。千花に向かって一直線に。


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