イジワル副社長と秘密のロマンス
「しかもね。あと一体、作らなきゃいけないの……そっちは、にやりと笑った感じにしようかな」
彼女の呟きを聞き、俺は手を差し出した。
「ノート貸して。ペンも」
驚きながらも、手にノートとペンを乗せてくれる。
「ネコが俺だって言うなら、もう一体は千花しかいないでしょ」
「えっ!?」
顔を赤らめた千花を数秒見つめた後、俺はペンを動かし始める。
彼女を見て浮かんだイメージを、素直に紙の上に描いていく。
「作るなら、これにしなよ」
書き終えたノートを返すと、千花は両手でそれを持ち、目と口を大きくさせた。
「わぁ。樹君、絵も上手いんだ」
「千花画伯には負けるけどね」
「画伯言わないでっ!」
俺が描いたのはウサギ。優しくほほ笑んでいる、ウサギ。
迷わずこの表情を描いてしまったのは、何度か千花の微笑みにどきりとさせられているからかもしれない。
千花は俺の描いたウサギを見つめながら、嬉しそうに笑みを浮かべている。
「……ウサギだぁ……可愛い……嬉しい」
「あ、確かに可愛く描き過ぎたかも。千花に似せるから、描き直させて」
「嫌ですっ!」
手を伸ばすと、千花がノートを胸元で抱きしめた。「直させない」と必死にノートを守る様子に苦笑する。