イジワル副社長と秘密のロマンス

千花が言葉をのんだのが、見て取れた。


「それに、千花が男と一緒にいるのみたら森が悲しむじゃん、森の気持ちも考えてあげなよ!」


続けて投げかけられた言葉に、千花の視線が落ちていく。気落ちした様子を見て、一気に心が冷めていく。苛立ちが生まれる。


「あっ。そう言えば、このお祭り、森と一緒に行く約束したんでしょ?」


女の片割れが掲示板を指さした。つられて、そこに貼られていたポスターを、もう一度見てしまう。

約束したんだと思えば、すべてが面白くなくなっていく。


「森、すっごい喜んでたよ。千花とのデート」

「千花、新しい浴衣買ったんだって? 森が、浴衣姿早く見たいなぁって、騒いでたよ」


表情を強張らせた千花へ、女二人は畳みかけるように森の情報を口にする。やっぱり面白くない。

ついでに、“浴衣ね”と心の中でふて腐れ気味に繰り返した自分自身も面白くないし、心の奥底に感じた小さな痛みも面白くない。

ちらりと千花を見れば、彼女も俺に視線を返してきた。じっと見つめれば、すこしだけ怯えた表情を浮かべた。

瞳が潤んでいることに気づけば、何か言葉をかけたくなる。けれど、かけるべき言葉が分からない。気持ちだけが急いていく。

女の片割れがぱちんと手を鳴らした。


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