イジワル副社長と秘密のロマンス
「ねぇねぇ! 私たちも一緒にお祭り行かない?」
「……は?」
「それ良い! 誰かと行く予定がないなら、私たちと一緒に行こうよ! ご希望とあらば、私たちも張り切って浴衣着ちゃうけど」
「別に見たくない」
即答すると、「ひどーい!」とテンション高めにふたりが声をあげた。
「いろいろ話したい。君のこといろいろ知りたいもん。彼女いるかどうかとかも、聞きたいし!」
「俺に彼女がいたら何? 別に関係ないでしょ」
「そんなこと言わないで教えてよ! 一緒に見て回ったら絶対楽しいだろうなぁ。ねぇ、行こうよ!」
一拍置いて、俺は笑みを浮かべた。馬鹿らしくて、笑えてくる。
「絶対楽しい? あんたらに連れまわされる俺の気持ちも考えてよ。どう考えたって、楽しくないよね」
女二人の表情がすっと消えていく。
「何もそんな風に言わなくても」
戸惑いの中にわずかな苛立ちが含まれたことを声から感じ取れば、相手側の気持ちが冷め始めたことを知る。やっとこの茶番の終わりが見えてきた。
静まり返ったところで、千花が顔を上げ、小さく声を発した。
「……樹君。バスが来た、よ?」
言葉通り、バスが一台こちらに向かってきていた。バス停はここから少し先にある。