イジワル副社長と秘密のロマンス

森を掴む手に力を入れる。力任せに引き寄せると同時に、自分の口からさらりと言葉が出てきた。


「あぁ。それと……俺もだから」


しっかりと声に乗せると、ずっと自分の中に燻っていた感情とやっと向き合えた気がした。


「俺にとっても、千花は大切で特別な存在だから」


悔しそうな顔をした森へと、もう一言、刺々しく追加する。自然と笑みが浮かんでしまった。


「まだ分からない? ここから黙って消えるべきなのは、俺じゃない。あんたの方だって」


悔しそうな表情が、徐々に悲しげなものへと変化していく。相手の肩の力が抜けた。反撃する気がなくなったのを見て取り、俺も手の力を抜く。

森が後ずさった。そしてよろりと踵を返し、おぼつかない足取りで逃げていく。

息を吐くと、俺の隣りに千花が並び、不安そうな顔で見上げてきた。


「森君に、何を言ったの?」


自分の声が聞こえていなかったことに、またホッと息を吐く。


「別に……千花が嫌がってるからやめた方が良いよって、優しくアドバイスしただけ」

「優しく?……そ、そうなんだ。ありがとう」


“優しく?”という部分で千花が苦笑いをした。怖かったけどって、彼女の心の声が聞こえたような気がした。


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