イジワル副社長と秘密のロマンス
俺はもう一度息を吐く。気持ちを切り替えた。
「千花」
呼びかけ、彼女と目が合った瞬間、鼓動が速くなっていく。自分が緊張していることを知る。
「俺と一緒に、夏祭りに行かない?」
千花が潤んでいた瞳を大きくさせた。少しずつ笑みが広がっていく。
「うんっ!」
俺の申し出を笑顔で受け止めてくれた。
ほんの数秒、呼吸を忘れる。心の底から、その笑顔を可愛いと思った。
「私もね、やっぱり、どうしても樹君を誘いたくて、我慢できなくなっちゃって、最後の悪あがきと思って牧田さんの家に行こうと思ったら、途中で森君に捕まっちゃって、なかなか振り切れなくて。どうしていいのか分からなくて」
フラストレーションが爆発してしまったらしい。さっきまで笑顔だったのに、泣きそうな顔になってしまっている。
森だけじゃない。俺も、彼女を辛い気持ちにさせていたと思う。
手を伸ばし、千花の頭に触れた。ごめんの気持ちを込めて、そっと撫でてみる。
泣きそうだった千花の顔に朱がさした。恥ずかしそうに視線を泳がせはしたけど、嫌がってはいないと思う。
顔を赤らめたまま大人しくしている。口元に、ほんのりと笑みを浮かべながら。