イジワル副社長と秘密のロマンス
「樹君はどんな様子でしたか? 私本当は、樹君のこと知らないことだらけなんです。一緒に過ごしたのだって短期間ですし。ニューヨークに行っていたことも知らなかったくらいで……追いかけていけた津口さんを羨ましく思ってもいたり」
徐々に肩が落ちていく。自分がなんだか情けない。
白濱副社長が大きな瞳で私を見つめながら、口に運びかけていたコーヒーカップをソーサーに戻した。
「へぇ。そうなんだ……俺ね、藤城兄弟とはカレッジが一緒だったんだ。兄とは授業でよく顔を合わせて仲良くなって、それから弟とも話すようになったんだけど。藤城弟はどこにいても藤城弟だよ。小生意気なあのまんま。魅惑的なおねーさんに言い寄られても『あんたに興味ないから』の一点張りで、男としての本能が欠如してる可哀想な子に見えてたけど」
くくくと喉を鳴らし、白濱副社長は私に悪戯っ子のような笑みを向けてくる。
「興味ない。それこそ言葉通りだったんだなって今は思うよ。興味ある対象には、人間らしい正常の反応をするってことを知っちゃったからね」
私を見つめていた瞳が、ふいに熱をはらんだ。妖しく輝いたことに、どきりとさせられてしまう。
緩み始めていた気持ちが、一気に引き締まっていく。白濱副社長に対する警戒心が戻ってくる。