イジワル副社長と秘密のロマンス
大人になったら俺も連れて行くからねと言っていたけれど、永遠と続く話を聞かされるはめになりそうだから、勘弁してほしい。
そして、朝食に昼ごはんと賑やかな食事を終え、午後3時を過ぎてやっと、祖母ちゃんは田代さんの運手で東京に帰って行ったのだ。
「ほら! 樹君もぼやぼやしていられないわよ。準備しなくちゃね!」
朝子さんに肩を背中を叩かれ、もう一度携帯で時刻を確認してしまう。
「浴衣、出しておくわね」
「有難うございます」
今日は夏祭りだ。千花との待ち合わせは4時。のんびりなどしていられない。
気が急いてしまい、十五分ほど早く待ち合わせ場所に向かうと、同じタイミングで浴衣姿の千花が姿を現した。合流した俺たちは、顔を見合わせて笑う。
「……樹君、はやいね」
「そっちこそ。少し早いけど、行く?」
まだ明るい空を見上げながら問いかけると、「うん」と小さな返事が聞こえてきた。
同時に、千花が俺の手にそっと触れる。緊張した面持ちで、手を繋ぎ合わせてきた。
不安そうな顔で俺を見あげたから、彼女の手をしっかりと握り返した。千花から手を繋がれて、俺が嬉しくないわけがない。