イジワル副社長と秘密のロマンス
彼女のホッとしたような笑みに、愛しさが込み上げてくる。
ついでにちょっとだけ意地悪もしたくなる。繋がった彼女の手の甲を、自分の口元まで持ち上げて、軽く唇を押し当てた。
「はぐれると困るから、俺の手、離さないで」
「いっ、樹君こそ。迷子にならないでよね! 私の手、しっかり掴んでて……って、笑わないでよ!」
千花は目を大きくさせ、頬を赤く染め、慌てふためいている。期待通りの反応が、面白くてしかたがない。
「迷子になるのは千花の方だから。でも俺、千花のことはすぐに見つけられるから。問題なし」
思ったことをそのまま口にすれば、千花がはにかむような笑みを浮かべた。
「ありがとう。はぐれちゃったら、樹君のこと動かないで待ってるね」
「……ちょっ。しみじみ言わないでくれる? はぐれないで済むにこしたことはないんだし」
突っ込みを入れれば、千花がへへへと緩く笑った。その顔も可愛いから、注意する気が失せていく。
「あっ。ねぇねぇ、樹くん。見てみて」
千花が繋いでいた手を離し、持っていた巾着からなにかを取り出した。
「完成しましたー!」
そしてドヤ顔でそのなにかを押し付けてくる。手のひらに収まる二体のなにかを見つめて、俺は一生懸命考えた。