イジワル副社長と秘密のロマンス
「持ってて呪われたりしたら、嫌なんだけど」
「呪われない!」
「だったら良いけど。しばらくって、どのくらい?」
「私が良いって言うまで!」
「なにそれ。指示待ちとか、面倒くさい」
「いいから持ってて! 行くよ、樹君!」
するりと、千花が俺の腕に腕を絡めてきた。そのまま彼女に引っ張られ、止まっていた足が動き出す。
「いつか絶対、樹君に見直したって言わせてみせる!」
いつか。彼女が口にしたその言葉に、鼓動が重く響いた。
「……楽しみにしてる」
切なさを押し隠し、俺はその“いつか”に思いを馳せた。
手を繋ぎ直して、俺たちは公園へと続く坂道をのぼり始める。
まだ陽は落ちていないけれど、公園の方向からは祭囃子が聞こえてきている。かき氷を食べながら、小学生くらいの男の子たちが坂を下りてくる。祭りは始まっているようだ。
「ねぇ。樹君。先に寄ってもいいかな」
言いながら、千花は分かれ道で左に進もうとした。いつもは自然公園のある右方向の道を進むため、神社へと通じる左側に折れるのは初めてのことだった。
「いいよ」
軽く頷き、俺は千花に続いて鳥居をくぐる。参道を進んで行けば、程なくして目の前に本殿が現れた。