イジワル副社長と秘密のロマンス
「疲れたから、座りたい」
戸惑っている千花をそこに座らせた。続けて俺も隣に腰掛けると、彼女がこちらへ体を向けた。
「樹君、ありがとう」
ありがとうの意味が分からず首を傾げると、千花がはにかんだ。
「……樹君、疲れてないよね。私が、足が痛いことに気づいて、座らせてくれたんでしょ? だから、ありがとう」
バレてる。俺はそのことに苦笑いしつつ、素直に「どういたしまして」と言葉を返した。
「樹君、優しいな」
別に優しくなんてない。相手が千花だから、千花を気にして見てるから、気付いただけの話である。
彼女は再び両手に持ったマスコット人形を、ニコニコしながら見つめている。その横顔を見て、俺は浮かんできた疑問を口にした。
「そう言えばさっき、神社ですごく真剣な顔してたね」
驚いた表情を浮かべたあと、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「実は私ね、頑張りたいことがあるんだ」
「頑張りたいこと?」
「うん……あのね……」
言いかけて、彼女は視線を手元に戻した。顔を赤くさせ、黒ネコらしきものを両手で包み込む。