イジワル副社長と秘密のロマンス
「申し訳ありません。窓際の席がすべて埋まっておりまして。カウンター席しか……」
「カウンター席で構いません……邪魔が入らず、彼女とゆっくり喋れるところならどこでも」
樹君がさらりとそう言って、繋がっている手に軽く力を込めてきた。それらに反応し、頬が熱くなっていく。
店員さんが樹君と顔を真っ赤にさせているだろう私を交互に見て、ふっと表情を柔らかくした。今すぐ何かで顔を隠したい。
「ご案内いたします」
ゆったりとした足取りで歩き出した店員のあとに続いて、私たちも歩き出す。
席を案内され、店内を歩いているだけなのに、やっぱり樹君は目立っているようだった。
女性はもちろんのこと、男性も、その存在感に惹かれているかのように、ちらちらと樹君を見ている。
そしてその視線は、彼に手を引かれ歩いている私にも向けられるわけで、だんだんと居心地が悪くなっていく。
樹君と一緒にいることに舞い上がってしまっている自分を見透かされているような気がしてくる。穴があったら入りたい。
お店の奥の方、カウンターの端の席に通され、私たちは並んで腰をかけた。
カウンターの向こう側にある棚には、たくさんのワイングラスが並んでいる。