イジワル副社長と秘密のロマンス
樹君の手が伸びてくる。温かな手が、私の頬に優しく触れた。
「よく考えてよ。津口が誰よりも大切な女だっていうなら、俺は彼女の傍を離れない。他の女を追いかけることなんてしない。でも俺は今、千花の隣にいる。千花との時間を選んだ。それが答え。納得した?」
ふたりは付き合ってないということ。樹君にとって津口さんが一番大切な女性というわけではないということ。
樹君の言葉が、いつも以上に、真っ直ぐ心に響いてきて、余計な感情が込み上げてくるよりも前に、私は樹君に頷き返していた。
「じゃあ、次、俺の番ね」
彼は私から手を離した。すっと息を吸い込み、不機嫌な眼差しをこちらに向けてくる。攻撃開始と言われたような気がして、とっさに私は身がまえた。
「さっきのあれ、なに?」
「えっ? あれって?」
「あの逆切れしてた眼鏡の男」
「眼鏡……あぁ! 袴田さんのことだよね? このあたりでは有名な老舗和菓子店の跡取り息子だよ。そこの和菓子屋のかりんとう饅頭が有名でね――……」
その先の言葉を、慌てて飲み込んだ。樹君が私を睨んでいる。
「饅頭の話は聞いてない。千花はあの男とどういう関係?」