イジワル副社長と秘密のロマンス
「これからいろいろと、どうぞよろしく」
触れた部分が小さな音を立て、私の心をも微かに震わせた。
「こ、こ、こちらこそ。よ、よろしくお願い、しま、す」
心の奥でずっと、樹君ともう一度付き合えることを夢みてた。
その夢が現実になったのに、まだ夢の中にいるようである。
震える指先から伝わってくるグラスの冷たさだけが、これが現実なのだと教えてくれる。
樹君が苦笑いで私を見ていることに気づき、私は気恥ずかしさを紛らわすべくカクテルを口に含んだ。
「あっ。まずは連絡先、教えて」
「……う、うん」
私はすぐさまバッグから携帯を取り出した。樹君もポケットから携帯を取り出し「ちょっと待って」と小声で囁きかけてくる。
本当に電源を落としていたらしい。真っ暗だった画面が息を吹き返したかのように、明るさを取り戻していく。
「そう言えばさっき、食事をするためにこっちに帰ってきたって言ってたけど、千花は今どこに住んでるの?」
「東京に住んでる。そっちで就職したんだ。樹君は?」
「俺も東京……なーんだ。遠距離恋愛してみたかったのに、出来ないじゃん」