イジワル副社長と秘密のロマンス

先ほど樹君と一緒にいた人たちの顔を思い出せば、どんな職種の人たちなのかがまた気になってくる。


「今日仕事だったんだよね。持ってるんでしょ? 名刺の一枚くらい」


じいっと、樹君の胸ポケット辺りを見つめてみたけれど、彼は私の視線をさらりと無視し、携帯片手にニヤリと笑った。


「ほら、酔っぱらう前にしっかり教えといて。連絡先」


私はそれ以上の追求を諦めて、携帯を持ち直す。樹君に身体を寄せた。


教えてもらった連絡先を携帯に登録すれば、樹君とこの先も繋がっていられるんだと、実感がわいてきた。

私が使っているのは古い型になりつつある携帯だけれど、彼の番号を登録しただけで、とっても高価な宝物へと変化したような気持ちになり、心が弾んでしまう。

お酒を飲み、運ばれてきたフィッシュ&チップスを食べて、何気ない会話で樹君と笑い合う。

出会った頃の話とか、二人で行った夏祭りの話とか、そんな昔の話はもちろんのこと、樹君が聞きたがるので、私の仕事のこともいろいろ話した。

学生の頃から、可愛らしい中にも大人っぽさやラグジュアリー感のある“Aqua Next”というブランドに、私はずっと憧れていた。


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