宛先は天国ですか?



早野先生のその行動が何を意味しているのか、考えずともすぐ分かった。

わざわざ、わたしに将太さんの誕生日を教えてくれたのだ。

メールを打ち込もうとする先生の手を覆い、首を振る。


「9日は、将太さんは暇じゃないので誘っちゃだめです!」

早野先生に一言、それだけ言って学校を飛び出した。


9日まで、もうのんびりしている時間はなかった。

誕生日なのにさすがに手ぶらで会う気にはなれなかった。

なにか、小さなものでもいいから、口実になるプレゼントが欲しかった。


駆け出して、電車に乗って、家よりも先に向かったのはショッピングモールだった。

持っているお小遣いも少ないし、そんないいものは買えないけれど…。

ゆっくりと歩き出して、とあるショーウィンドウの前でふと足を止めた。

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