肉食系御曹司の餌食になりました
私がトイレに行っていた間に、支社長はかなりの量の追加注文をしたようで、次々と運ばれてきてテーブルの上は皿でいっぱいになる。
智恵達は帰ってしまい、私のお腹は既に満たされているというのに、この量をどうすれと言うのか。
しかも、牛すね肉の赤ワイン煮込みや、鴨のロースト、ラムチョップ香草パン粉焼きなど、お腹にズシリときそうな肉料理ばかり。
「支社長、ふたりでこの量は厳しいと思います」
事実としてそう伝えたら、「私ならひとりでも食べ切れますが、亜弓さんは少食ですね」と返された。
『ひとりで食べ切れるなんて嘘でしょう』と思う私の横で、ナイフとフォークを美しく操る彼は、大量の肉を次々と胃袋に収めていく。
自分で頼んだから無理しているのではないか、強がっているのではないかと思っていたが、彼に苦しそうな様子は微塵もなく、美味しそうに食べ続けている。
それを見ていると、満腹に近かったはずなのに、私にも食欲が戻ってきた。
「あの、その鴨肉、ひと切れもらってもいいですか?」
そう聞くと、「厳しいはずでは?」と嫌味を言いつつも、彼は自分のフォークに刺した鴨のローストを私の口に入れてくれた。
食べさせるという行為はやめてほしいという気持ちは、肉の旨味ですぐに消されてしまう。
上品な脂の旨味がバルサミコソースの酸味に引き立てられ、そこにレッドペッパーの辛味がアクセントとなり、癖になりそうな美味しさだ。