肉食系御曹司の餌食になりました

「なぜって……普通のふたり客は、向かい合わせで座りますよね。それと、この手を離してくれませんか?」


さっきまで少々得意げな気分だったのに、ふたりきりになると急に身の危険を感じるようになる。

それに、さすがにこの歳で、人前でいちゃつくのはどうなのか。ファミレスの高校生カップルじゃあるまいし。

私の言葉に腕を退けてくれた支社長だけど、「向い側には行かせません。折角、縮めた距離を離されたくありませんので」と、今度はテーブルの下で手を繋がれる。


彼の大きな右手が、私の左手をすっぽりと包み込む。

人から見えないのでこれなら恥ずかしくないとはならないし、ふたりとも右利きなのに、これでは支社長が食べ難いでしょう。


「支社長は食事ができなくなりますよ」

「そうですね。では亜弓さんに食べさせてもらうことにします」


なんで私が……。

『アーンして?』と言っている自分を想像し、顔が引き攣る。

そんなキャラじゃないと言っても、支社長にかかれば本当にやらされそう。

それで仕方なく「分かりました。隣にいますから」と答えると、やっと繋いでいる手も離してくれた。

< 121 / 256 >

この作品をシェア

pagetop