肉食系御曹司の餌食になりました
器から顔を遠去けるとすぐに曇りは消えるけど、麺を啜るたびに視界が白く変わるのが煩わしい。
コンタクトよりメガネの方が楽なのに、温かい麺類を食べるときだけは困るんだよね……。
メガネに対する不満は口に出していないのに、チャーシューの全てをもう早食べ終えた支社長に、「メガネを外して食べてはどうでしょう?」と言われた。
「外すと見えないので」
「白く曇る窓越しより、手元がよく見えるのでは?」
「そうですけど……別にこのままでいいです。メガネ生活に慣れていますので」
本当は外したい気持ちでいた。
支社長に言われた通り、その方がよく見えるから食べやすい。
しかし、それをできない理由は、Anneとの共通点を見つけられたら困るからだ。
メガネで人の印象はかなり変わる。
今の私は付け睫毛をしていないし、唇も頬も赤みが足りない薄いメイクだけど、ベースは同じ顔。
なるべく安全な道を進みたいから、彼の前でメガネを外したくないのだ。
メガネの話を終わらせたつもりで、また見えない視界の中で麺を吹いて冷まし、つるつると啜っていた。
吹かなければこれほどまでに湯気を浴びたりしないのかもしれないけど、口の中に火傷はしたくない。