不器用男子に溺愛されて
「小畑」
「えっ、わあ!」
突然呼ばれた名前。その声に反応したと同時に私の目の前に飛んできたのは、紙パックの桃ジュース。私は、それをなんとか受け取り、両手でしっかりと持った。
「ありがとう。理久くん」
「ん」
理久くんにお礼を言い、私は桃ジュースの紙パックについていたストローを袋から出し、てっぺんに挿した。
ストローを口につけ、ジュースを喉の奥に流し込む。そんな私の隣で理久くんは餌を頬張るミャーコを見つめていた。
ミャーコを見つめる理久くんを、私が見つめる。
付き合っているはずなのに、どうしてこんなにも私の想いは一方通行なのだろう。
本当は、もっと理久くんにも私の方を見て欲しいし、もっと話したいし、もっと近づきたい。触れたい。そう思っているのに。
私は、今日もそんな気持ちを伝えられないまま、理久くんの隣で笑っていた。