不器用男子に溺愛されて
真っ暗な視界の中で、理久くんが次に発する言葉を待つ。そんな私に、次の瞬間、信じられない言葉が降ってきた。
「それなら、別れる?」
「え……?」
重たい瞼を上げる。そこには、さっきまで私の方を見ていたはずの理久くんはいない。あるのは、ミャーコに視線を向けている理久くんの横顔だけ。
「その不安とか不満は、俺には満たしてやれない」
ズキン、と胸が鋭い痛みを感じた。
痛い。痛くて、つらくて、苦しい。
「それに……前から、お前に俺は似合わない。ずっと、そう思ってた」
「やだ……ちがっ……」
いやだ。違う、違う、違うの。そうじゃないの。そうじゃない。
声にならない声が、理久くんへと訴える。でも、そんなものが理久くんへ伝わるわけもなかった。
「我慢ばっかりさせて悪かったな。半年しかなかったけど、ありがとう」
涙が、ぼろぼろとこぼれ落ちた。
服の袖で涙を拭い、少しの間はっきりと映る視界に見えたのは、やっぱり理久くんの横顔。
最後の最後まで私の方を見てはくれなかった理久くんの姿を最後に目にした私は、ぼとぼとと涙を落としながら理久くんの部屋を後にした────。