不器用男子に溺愛されて
「ああ、そういえば仲良いって加奈代さんに聞いたことあるような……ねぇ、あんた聞いてない? あの人からみや子のこと」
「さあねえ」
咲ちゃんの質問にドキドキと音を立てた私の心臓。ゆっくり森田さんを見上げると、森田さんは両手のひらを上に向けて欧米なリアクションをした。
「ふざけないで言いなさいよ」
「言わなーい」
「はあ? もう、いいわ。時間の無駄。行こうみや子」
「えっ、あ、咲ちゃん」
へらへらと笑っている森田さんを置いて、私と咲ちゃんはオフィスへと戻った。
幸い、偶然にも理久くんはオフィスに居らず、私と咲ちゃんはいつものように時々他愛もない会話を挟みながら仕事に打ち込んだ。
───そして、昼休み。
「ねぇ、みや子。私、すごく良いこと思いついたのよ」
コンビニで買ったのであろうサラダパスタを頬張りながら咲ちゃんがそう言った。
「良いこと?」
「そう。良いこと」
まあ、後で教えてあげる。と言って咲ちゃんはパスタを食べ続けた。
咲ちゃんの言う〝良いこと〟とは何のことだかわからないけれど、私はひとまず頷いて「うん、分かった」と返事をした。