不器用男子に溺愛されて
単純な私は、理久くんと仕事終わりに会える。そう思うと仕事への意欲がいつもとは比ではなかった。あまりに仕事へ意欲的な私に佐伯さんが「何か良いことでもあったのか」と私に聞いてくるくらいには意欲的で、小さなミスも今日はたったのひとつだってなかった。
「今日はね、佐伯さんが褒めてくれるくらい調子が良かったんだよ」
私は、今日のことを理久くんの部屋のフローリングに座りながら話した。そんな私の話を、理久くんはやはりいつものようにミャーコを構いながら聞いている。
「最近注意されることが多かったから嬉しかったなぁ」
私の話を聞いているのか聞いていないのか、それは正直よく分からないけれど、そんなことはどちらでも良かった。私は今、そのくらいご機嫌で、この場所で理久くんと一緒に居られることがただただ嬉しかったのだ。
しかし、そんなご機嫌な私とは反対に少しだけ不機嫌そうに見える理久くん。まあ、理久くんの場合、不機嫌そうなことの方が多いし、それが当たり前のようでもある。だけど、少しだけ気になってしまった私はミャーコを見ている理久くんの表情を少しだけ覗き込むようにして口を開いた。
「理久くん、理久くん」
二回、理久くんの名前を呼ぶ。すると、理久くんはミャーコから視線を私の方へと移し「なに」とだけ答える。