不器用男子に溺愛されて
「私がちょっと印刷ミスしただけで〝しっかりしろよ。お前は印刷もできないのか〟なんて言ってね。終いにはババア呼ばわりよ? だからあんたも同い年だって言ってやったわ!」
腹立つ、と付け足して怒っている様子の加奈代さん。もちろん、本気で怒っているわけではないと思うけれど、どうしてこうも二人は言い合いになってしまうのだろうか。
「加奈代さん、加奈代さん」
「なに? みや子ちゃん」
「加奈代さん、理久くんのこと嫌いなんですか……?」
前々から少しだけ気になっていた。私の好きな先輩が、私の好きな理久くんとよく言い合いをしている。それは、見慣れた景色で、少し微笑ましくもあったけれど、もし本当に嫌い合ってるとしたら……と考えると悲しかった。
意を決して加奈代さんに気になっていた事を尋ねた私。そんな私の質問に、加奈代さんはくるりと目を丸くしたあと口を大きく開けて笑い出した。
「あははは!みや子ちゃん、私があいつのこと本当に嫌ってると思って気にしてるの? 確かに堀川と私は仲が良いわけではないけど、嫌いだとか思ってるわけではないから安心して。ほら、私の性格もこんなだし、みや子ちゃんが一番分かってると思うけど、あいつもあんなでしょ? だからいつもああなるだけなのよ」