不器用男子に溺愛されて

 加奈代さんの言葉に、何故かひどく納得をした私は、安心して胸を撫で下ろした。

「私こういう性格だからすぐに思ったこと言っちゃうし、堀川は性格捻くれてるしねぇ。だから私、いつも思うんだけど、本当に堀川みたいな面倒な男と付き合えるのはみや子ちゃんくらいだと思うのよ」

 私なら絶対無理、と言いながら両手を交差させてばつ印を作る加奈代さん。ふとそんな加奈代さんの横あたりに視線を向けると、加奈代さんの横から不機嫌そうな表情の理久くんが姿を見せた。

「面倒な男で悪かったな。大体、お前みたいなヤツこっちから願い下げなんだけど」

「はあっ⁉︎ なーに言ってんのよ。その台詞そっくりそのままお返しするわ。大体ね、みや子ちゃんだって本当はあんたと嫌々付き合ってるかもしれないじゃないの」

 ふと私と咲ちゃんが顔を見合わせた。目が合った咲ちゃんは〝ああ、また始まった〟と言わんばかりの呆れた表情を浮かべ、パソコンと向き合い作業を始めてしまった。

 私はどうすることも出来ず、でも、かと言って咲ちゃんのように二人を放って作業をすることも出来ない。だから、ただただ二人のことを交互に見ていた。すると。

「残念だけど、小畑はそれでも俺がいいんだってさ」

 加奈代さんの言葉に、ドヤ顔に近いような不敵な笑みを浮かべてそう言った理久くん。その少し意外な言葉に、私の心臓は一度だけ大きくどくんと跳ねた。

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