不器用男子に溺愛されて

 綺麗になって理久くんの彼女として選ばれるんだ。そう決意した私は、早速、咲ちゃんもいつも実践している座りながらできるダイエットを始めていた。

 まずは、椅子に正しい姿勢で座るという基本的なもの。それから、膝の間に電話帳を挟んでおくというダイエット法。そして、タイミングを見計らって口を大きく開いて顔の筋肉をほぐし、小顔になる体操をする。

 そんな風にして必死で仕事とダイエットを同時にこなしていると、私の制服の胸ポケットに入っている携帯が鳴った。

 携帯をポケットから取り出し、来ていたメッセージを見る。メッセージの相手は理久くんで、内容は《ごめん。今日もダメになった》という内容だった。

 私は、あからさまに肩を下げるとデスクに顔を伏せた。

「楽しみだったのになぁ……」

 小さく呟いた私の一言が聞こえたのか、隣から咲ちゃんが「今日も中止になっちゃったの?」と問いかけてきた。私はその問いかけに黙って一度だけ頷く。

「ねぇ、それならさ。みや子、今日、私と一緒にいいとこ行かない?」

「え?」

 デスクに顔を伏せたまま、だらんとしている私。そんな私に咲ちゃんがきらきらとした瞳で笑いかける。

 そんな咲ちゃんの言う〝いいとこ〟というのは一体どこのことなのだろうか……。


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