不器用男子に溺愛されて

 今日の仕事終わりは、一体どこに行くのだろうか。そんな事を考えて予測しているうちにあっという間に迎えた18時。咲ちゃんと私は、18時になると同時に立ち上がると、二人並んで仲良く会社を出た。

 会社を出た咲ちゃんと私は、アウトレットショップや可愛らしい雑貨屋さんの並ぶ駅前の大通りへと向かう。大通りに入ると、まずはブランドショップに私を連れて入った咲ちゃん。咲ちゃんは、迷うことなく入ってすぐの目立つ場所に置かれたマネキンの足元にあるパンプスを手に取った。

「これいいじゃない。みや子、明日からこれにしよう」

「え? でもこれ、ちょっとヒール高くないかな」

 咲ちゃんが持っている10センチ近くはヒールのありそうな黒いパンプス。それは、いつもぺったんこに近い約3センチのヒールを履いて過ごしている私にとってはとんでもなく高く見えた。

「何言ってんのよ、8センチよ。ほら、私のと同じ。このくらい大丈夫大丈夫」

「ええ、咲ちゃんヒール高いなと思ってたら8センチなんて履いてたの?」

「8センチくらいへっちゃらよ。ほら、綺麗になりたいんでしょ? ヒールが高い方がスタイル良く見えるじゃない」

 咲ちゃんの一言に、私はハッとした。

 そうだ。私は、あの女の人みたいに……いや、なれるものならそれ以上になると決めたんだった。

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