最後の瞬間まで、きみと笑っていたいから。

「風、涼しいな」


彼は長い足を邪魔くさそうに組んで、頭上を見上げる。


つられて顔を上げると、すっかり暗くなった夜空に、ジェットコースターのレーンがライトアップされて浮かび上がっていた。


そして、キャー……と悲鳴が近づいては離れる。


「多賀宮くん、私ここで見てるから、行ってきていいよ。4回目」

「いいよ。ガキじゃあるまいし」

「3回も全力で楽しんでおいて、それはないのでは……」


ぽつりとつぶやくと、

「は?」

悪そうな顔で睨まれたので、

「いえ、なんでもないです」

と、うつむいた。


そんな私の態度に、隣で多賀宮くんがクスリと笑った。


具合よくなったみたい。よかったぁ……。

それよりなんだか今って、いい感じじゃない?


そよそよと、頬を撫でる風が気持ちよくて。

時折、ジェットコースターに乗っている人の歓声が、近くなったり遠くなったりする以外には、静かな夜で。


なんだか不思議だな……。


生まれて初めて、好きな男の子とふたりきりで夜の遊園地に来てるなんて……。ほんと、夢みたいだ。

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