王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
翡翠色の瞳を持つ背の高い青年は、隣国の王族を示すインディゴブルーのマントで胸の中におさめたラナをすっぽりと覆い隠す。
ブルネットの前髪がかかるアーモンド型の双眸は静かな怒りに燃え、端正な顔立ちには威厳と品位が宿っていた。
真に高貴な者が持つ気品と、幾重もの戦いをくぐり抜けてきた男だけが持つ精悍さに、彼を前にしたすべての者が圧倒される。
青年は左腕にしっかりと姫君を抱え、右手に騎士の剣を持って、敵陣に囲まれたまま毅然として言い放つ。
「我が名はエドワード・バロン、ナバ王国アルレオラ大公。ラナ・カリムルーは私の花嫁だ!」
ラナは青年の腕に抱かれたまま、彼のマントの隙間から顔だけをひょっこりと出した。
同時に民衆の間から青い制服に身を包んだ兵士たちが飛び出してきて、ラナを連れ去ろうとしていた野盗を次々に捕らえていく。
「お前たちこそ、彼女が俺の婚約者と知っての狼藉であろうな。ナバの王太子の妃に手を出そうとはいい度胸だ。誰の差し金か吐かせてやるから覚悟しろ」
数十人はいたはずの敵は、あっという間に縄で縛られて地面に倒される。
船の方にいた者たちもスタニスラバの海兵に捕まり、青い制服の兵士たちに引き渡されていった。
野盗がひとり残らず捕縛されると、ラナはようやく男のマントの中から解放された。
青年が身に纏った黒に近い濃紺の軍服は、たしかにナバ王国の王立騎士団で最高級の一等騎士のみが着ることを許された衣装だ。
胸元にはナバの王家の紋章である火竜の描かれた勲章を始めとしたいくつかのブローチが飾られ、彼女の頬に押しつけられていた硬いものはこれだったのかと合点した。