王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

(誰に命じられているのかはわからないけど、私のことは殺せないのね)

それが確かならば、ラナが取るべき行動はひとつだった。


「ヴィート!」


ラナは意を決し、船の方へ走り出した。

あちらへ辿り着ければ軍艦の中には味方がたくさんいる。

現に様子がおかしいことに気づいた海兵たちは次々と港へ下りてきて、ヴィートを筆頭にこっちに向かって来ていた。

しかしやはり市民に紛れていた敵に邪魔され、まだラナを救えるほど近くにはいない。


「おいおい、俺たちゃ本気だぜ」

「殺さずに痛めつけるなんざお手の物さ」

「脚を狙えよ。走れなくしてやれ」


男たちは興奮の奇声を上げてラナに飛びかかってくる。

そのうちのひとりが剣を高々と振りかぶった。

これにはラナもどうすることもできず、ただ掲げられた剣に反射して太陽の光が閃くのを見ていた。

痛みを覚悟して目を閉じたとき、鉄が交じり合う鋭い音が港に響き渡り、彼女の身体は男の腕に攫われていた。

ラナは敵に捕らえられてしまったのだと思い、なんとかその腕から逃れようともがく。

しかし肩を抱く大きな手は随分と優しく、ラナの身を守るように抱え込んでいる。


「なっ、何者だ!」


彼女を囲んでいた野盗の怯むような声が聞こえ、ラナは目を開いて自分を抱く男を見上げた。
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