王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

(この方が、ナバ王国のエドワード・バロン様……私の夫になるお人)

ラナは慌てて裾の乱れたドレスを整え、胸の前で手を組み合わせて膝を折る。

彼女を襲った緊張の連続に暴れる鼓動をどうにか落ち着け、感謝と安堵の気持ちを精いっぱい込めて頭を下げた。


「スタニスラバ王国ギルバート王の娘、ラナ・カリムルーと申します。お目にかかれて光栄です、王太子殿下。危ないところをお助けいただき、大変か……むっ」


突然、エドワードの手がラナの頬を掴んだ。

ぐいっと顎を持ち上げられ、至近距離に魅力的なエメラルドの瞳が迫る。

見るにつけて芯の通った鼻筋や薄くて形のいい唇に目を惹かれたが、今はその美しい顔立ちにどこか落胆と苛立ちをにじませていた。


「お前はナバの妃になるためにここへ来たんだろう。平和ボケはけっこうだが、妻としての役割は果たしてくれ。むしろそれ以外はなにも望んじゃいない。お前が攫われていたら、どうなっていたかわかっているのか?」


唖然として目を丸くするラナのことを睨むように見下ろす王太子は、大層不機嫌そうだ。

もしも彼女が誘拐されていたら、エドワードは国を挙げて婚約者を奪い返しにいかなくてはならなかっただろう。

ラナは国を戦争の危機に晒したのだ。
あまりに無防備すぎる。

いくらスタニスラバが豊かで治安もいいのんびりとした海国とはいえ、易々と野盗に騙されるなど平和ボケにも程があるというもの。


「いいか、妃が他の男の手に落ちるなど言語道断。お前は俺のものでしかないのだということをもっと自覚しろ」


エドワードはまるで彼の所有物なのだと教え込むようにラナの細腰を引き寄せ、王族らしく尊大に言った。

(こんな婚約者とは、どんなに努力してもわかり合えないかもしれない)

ナバ王国の未来の国王夫妻は、互いに内心でそんなことを呟いていた。
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