王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「これは王女殿下。気がつかず、失礼いたしました」
ラナは細い足首が覗いていたローブの裾を整え、勢いよく身体を起こす。
キティやルザが懐柔されている今、望みの綱は彼しかいない。
なにを隠そうライアンは、彼女がキャンベルへのお忍びを決行できるように手を回してくれた男なのだから。
「ライアン、お願いがあるのです」
「はあ。いかがなさいましたか」
なにを言い出すのかと、ライアンは多少身構える。
「私、外へ出たいの。近衛師団の皆様には迷惑をかけてしまうかもしれないけれど、私にも尊重されるべき自由があって然りだと思うわ」
口だけは達者な彼女である。
エドワードがすかさず顔をしかめた。
「まだそれを言うのか。だから、何度も言っているだろう。お前は俺の腕の届く範囲から離れてはいけない」
「けれど、私が過保護にされて喜ぶ王女ではないと、殿下もご存知でしょう。深窓の令嬢なんて私らしくないわ。このままでは、私は私でなくなってしまいそうよ」
「お前が今のお前でなくなっても、変わらず俺が愛してやるから安心しろ」
「まあ。でも私は、今の私でなくなったら、殿下のことを好きではなくなっているかもしれないわ」
惚れた弱みというもので、これにはさすがのエドワードも反撃が鈍った。
「……お前がたとえ俺を嫌いになったって構わない。それでもお前は俺のものだ」
「私はあなたの物ではないわ!」
ラナは憤慨して地団駄を踏む。
久しぶりにこの言葉を本気で口にした。