王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
「ルザ、彼を隊商の馬車へ乗せてあげて。彼らをお城へ連れていってあげてもいいわよね? 皆様には馬車の護衛をお願いできるかしら」
目の前でこのように人が倒れて、それを捨て置くはロイヤル・ナバの騎士がすることではない。
近衛師団にも異存はなく、皆が王女に同意した。
すぐに数人が目抜通りを城のほうへ戻り、ラナが乗る馬車の通り道の安全を確保しに走る。
「ああ、王女様。感謝するよ」
マクシムはルザと協力してシェノールの身体を馬車の中に引き上げ、彼の震える手をしっかりと握った。
隊商の狭い馬車には、横たわるシェノールとマクシムと、それにラナとキティが乗り込むと座席が満員になってしまう。
けれどルザは王女の側を離れるわけにはいかなかったし、女性であるキティをひとりだけ街中へ追い出すのも紳士にあるまじきことと思えた。
なので、彼は馬車のドアに背を預け、窮屈な中腰でそこに立っていることにする。
隊商の馭者がムチを振るい、馬が嘶きを上げた。
それから王女と病人を乗せた馬車は、勢いよく市城壁のほうへ向かって走り出した。
その後ろをもう一台の荷馬車もすぐに追う。
「おい、どこへ行く! 城は反対だぞ!」
残された近衛兵たちは慌てて大声を出し、馬車を追いかけるが、全速力の馬には追いつけない。
今から走って市城門の先の跳ね橋を上げたところで、馬車の速度には敵わないだろう。
中のルザにも叫び声は微かな雑音としてしか聞こえなかった。