王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

最新鋭の燧発式を選んだ皇帝は、ゆったりとした動作で銃口に装薬と弾丸を詰める。

撃鉄を起こし、フリズンを開けて火薬を入れながら、胸を張って堂々と立っている王女に目を向けた。


「しかしお前こそわかっているのか? お前はこのバルバーニへ来ることを知っていながら、皇帝である私の求める力を勝手に捨てたのだな。統帥権も持たぬ小娘など、なんの利用価値もない。お前は自ら己の命を捨てたも同然だ」


ラナの足は恐怖に竦んでいたけれど、決して逃げ出さないと決めていた。

扇に隠れた唇を痛いほどに嚙み締める。

当然こうなることはわかっていたし、これはエドワードを苦しめないためでもあるのだ。

もしも彼女が生かされ、皇帝がその身を盾にエドワードに統帥権の行使を迫れば、彼は脅しに屈せずラナを見捨てるという選択をしなくてはならない。

一度バルバーニに友を奪われて苦しんだエドワードに、そんな決断はさせたくなかった。


「覚悟の上です」


ラナはしっかりと落ち着いた声で答えた。
恐ろしさで固まった表情は扇の下に隠せばいい。
その瞬間まで目を逸らすつもりはなかった。

アルベルトがコック・ポジションを取って銃口をラナに向ける。

皇帝による処刑の時間だ。

光の射し込まぬ謁見の間には息をするのも憚られるような沈黙が流れた。

ふと、アルベルトが口元を歪ませた。

喉の奥から笑い声をこぼしながら銃身を下ろすと、それを兵士の持つ盆の上に返す。


「まあ、よい。殺すのは簡単だが、それにしたってあのスタニスラバの王女だ。いずれ使えるときがくるやもしれぬし、その見た目ならしばらくは城に置いて様子を見ても損はあるまい。ヴィルマー、この小娘を今夜の相手にしてはどうだ」
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