王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
急に話を振られた第二皇子は、うろたえたように淡褐色の目を泳がせる。
それから頼りなさそうな細い声で申し出た。
「遠慮させていただくわけには参りませんか」
「お前には少々気が強すぎるか」
アルベルトは豪快に肩を揺らす。
立ち上がって息子の背を叩くと、はたと閃いて呟いた。
「エディ・バロンが王女に心底惚れているということもありえるな。愛する婚約者を盾にされては、ナバの火竜も私に従わざるを得ないかもしれない。他国の男とはひ弱なもので、女を犠牲にすることができないのだ」
今度ばかりは、ラナも動揺を隠せなかった。
(脅しには屈しないでと、手紙に書いてあるわ。私は誘拐された時点で死んだものと思ってほしいと。彼なら王子として正しい選択をしてくれる)
ラナは必死で自分に言い聞かせたが、扇を握った右手が小さく震え始める。
これを目にしたアルベルトは満足そうに眉を上げ、その脅しがナバの王太子に有効であることを悟った。
「私を甘く見るなよ、小娘。お前程度が命を賭したところで、私の手を3秒も煩わせることはできないのだ」
■3■
ラナが閉じ込められたのは、城の南にある細い塔のてっぺんだった。
簡素な寝台と食事をとるための小さなテーブルはあるが、その他にはなにもない狭い部屋だ。
石を積み上げた壁のずっと高いところに小さな窓はついているものの、ラナはここへ来るまでに長い螺旋階段を上らされたから、塔の高さはかなりあるものと思われる。
第一彼女の左足首は、部屋の中を動き回れる程度の長さの鎖でベッドの柱に繋がれていた。