王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
ベッドの上にはラナが連れ去られたときに着ていた衣服が置いてあったが、前開きのローブなどは胸の真ん中で切り裂かれてマントのようになっていたので、それを防寒具にでもしろということかもしれない。
アルベルトとの対峙に気力を使い果たしたラナは、床に座り込んで寝台の上に顔を伏せていた。
銃を向けられたときは本当に震えるほど怖かったし、決して死にたいと思っていたわけではない。
けれど統帥権を捨ててアルベルトを怒らせれば、きっとそうなるだろうと覚悟していた。
だから実際生きながらえてしまったら、これからどうしたらいいのか、ラナにはもうなにもわからなかった。
(殿下はこの先どれほど苦しむことになるのかしら。お父様やヴィートも追い込まれてしまうわ)
こうなってしまっては、エドワードに統帥権を譲った決断さえ、正しかったのかどうか自信がなくなってくる。
一層のこと、ラナが統帥権を所持したまま自害してしまえばよかったのかもしれない。
結局彼女はこの先ずっと愛する者たちを苦しめ、好きな人に会って謝ることもできずに生きていかなくてはならなくなったのだから。
(ごめんなさい、エドワード様。なにをどうがんばったらあなたとナバのみんなにかけてしまった迷惑を取り返せるのか、私にはもうわからないのです)
ラナは勝手なことだとは知りながら、彼がただラナのことを忘れて、バルバーニの脅しになど耳を貸さずに幸せになってくれればいいと、そればかりを祈っていた。
部屋の小窓から射し込む日の光が、バルバーニの軍旗の色に変わってきたときのことだった。
鉄でできた重いドアが音を立てて開かれ、ラナは寝台の上から顔を上げる。
振り返ると、そこに立っていたのはアルベルトと同じ赤毛の男だった。