王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
弱り切ったラナの顔を見た男は、軽い調子の口笛を吹く。
「なんだ。あの親父が一度構えた銃を下ろしたっていうから、どんな怪物王女かと思ったのに。普通のかわいい女の子じゃないか。見に来て正解だな」
彼はにっこりと微笑むと、座り込むラナに興味津々で近づいてくる。
バルバーニ帝国第一皇子のフベルトスだ。
軍服を着ていた父や弟とは違い、金の刺繍の入った赤いジュストコールにジレという貴族の装いをしている。
首に巻いたクラヴァットは贅沢で繊細なレースによるもので、割と端正な顔についた灰色の双眸はラナを観察するようにジロジロと眺めた。
「なんでヴィルマーはきみをありがたく受け取らなかったのかな。あの腰抜けはエディ・バロンが恐ろしいのか? おかげで埃臭い部屋に閉じ込められて、かわいそうに」
フベルトスはラナの左足を繋ぐ鎖を足の裏で押さえ、彼女がその場から動けないようにする。
そしてラナの隣に屈み込むと、プラチナブロンドの髪に手を触れた。
「すごいな、本当に金髪だ。俺の妻にも青い目の女はいるけど、金色の髪はいないよ。親父はきみを好きにしていいって言うし、俺の好みよりはちょっと子どもっぽいけど、数年後に期待して11人目の側室にしてあげよう。俺の妻たちはみんなどこかの王女様だから、きっと仲良くできるさ。名前はなんていうの?」
疲れ切ったラナの頭は、彼がなにを言っているのか理解しようとしない。
彼女が呆然として答えないので、フベルトスは髪から手を離してラナの顎を掴んだ。
「ま、名前なんてなんでもいいか」
そう言っておしゃべりな口を閉じると、厚い唇を近づけてきた。