王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

これからいったいなにをされるのかはわからなかったけれど、彼はラナに痛いことをすると言っている。

男の力で痛めつけられるのは怖かったし、エドワード以外の男に触れられることに彼女の心が悲鳴を上げていた。

ラナの脳裏でエドワードの面影が揺らいで儚く消えてしまいそうになる。

フベルトスの手がペティコートの下に忍び込んだのと同時に、開け放たれた部屋のドアが鋭くノックされた。


「失礼します。フベルトス様、ご報告がございます」


フベルトスは硬質な声に一度手を止めたが、背後を振り返ることもなく歌うように答える。


「なんだい? あとにするか、今そこで言ってくれないか。見ての通り手が離せないんだ」

「しかし、皇帝陛下が至急フベルトス様のお耳に入れるようにと。その女性には聞かせてはならないともおっしゃっております」


皇子はしつこい伝令に舌打ちをすると、ラナの背から身を離した。

解放されたラナは震えをどうにか落ち着けようと、床にへたり込んで両腕で自分の身体を抱きしめる。

気分を削がれて不機嫌になったフベルトスは、彼女の髪を乱暴に引っ張って顔を上げさせた。


「命令だ。今夜、俺の寝室へ渡れ。そこできみを本当に俺の物にしてやる」

「フベルトス様、どうかお急ぎください」


すかさず皇子を急かす男は、バルバーニの陸軍兵士だろうか。

ラナは涙の溜まった目だけを動かしてドアのほうへ視線をやった。

彼は他の兵士と同じように赤いチュニックに黒のブリーチズを履いていて、赤みがかったダークブロンドの髪に指定の黒いベレーを被っている。

閉じ込められ、未来のない王女を哀れに思っているのか、琥珀色の双眸は少しだけ心配そうに揺れていた。
< 126 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop