王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
彼女の予想では、ラナはもうとっくにアルベルトの手にかけられて命を落としているはずだった。
けれど彼女は今でも生きている。
もしもラナがこの先もずっと生きていかなくてはいけないのだとしたら、彼女の唯一の望みはエドワードの元へ帰ることだ。
その希望を捨てては生きていけない。
それならばラナはこんなところで下を向いている場合ではなく、もう一度自分の頭で考えなくてはいけないのだ。
(ここで泣いていたって、私はどうせ死んだように毎日を過ごすだけよ。それを生きているとは言わないわ。みんなが絶対に無理だと言っても、この可能性に賭けてみる価値はあると思うの)
ラナは鼻をすすって泣き濡れた頬を手の甲で強く拭った。
彼女がアルベルトに訴えれば、きっと彼は嬉々としてラナをエドワードの前に立たせてくれるだろう。
そして彼女の身と引き換えにスタニスラバ海軍の統帥権の行使を迫るはずだ。
しかし、それではエドワードを苦しめてしまう。
そうなってからでは遅いのだ。
ラナはそれよりも先に、自分の足でナバへ帰る。
ここを逃げ出せばいい。
脱走を成功させてエドワードのところへ戻れれば、彼が脅される必要も、スタニスラバの海軍が卑怯な者に利用される心配もない。
ここが地獄と思うのなら、生きられる道を自分で探すのだ。
ラナはそうしてみたいと思う。
いつだって自分の好奇心の赴くまま、やってみたいと思うことに正直であったではないか。
それを我慢するなんて、彼女らしくない。
馬に乗るもの海を泳ぐのも、なんだってまずは自分で試してみた。
そうして生きてきたラナが、今こうした窮地に立って、同じように生きようとしないのは実に不自然なことだ。