王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

(そうよ。私は死んでしまう覚悟さえあったのだから。その気になれば、きっとなんだってできると思うわ)

ラナは快活さと理知の宿る瞳をしっかりと開き、力を込めて自分の足で立ち上がった。




■4■


塔の部屋に月光が浮かぶ頃、黒に近い紅色の衣装に身を包んだ侍女がふたりやって来た。

侍女たちはラナに純白のレースを重ねた服を着せ、身体には甘い香りのする練り物を塗り込んだ。

服は男の腕で簡単に引き裂かれてしまいそうに薄く、ふわふわと揺れて仕方がなかったので、胸の下で細いリボンを使って引き締める。

ラナは彼女たちの目を盗み、寝台の上のボルサの中に入れてあった小瓶を手にしていた。

バルバーニへ連れてこられるときにマクシムが託してくれた、媚薬という名の薬だ。

しかし薄い布一枚を被っただけのラナにはこれを隠せる場所がなかったので、仕方なくそれを胸元に入れることにした。

悲しいことにラナの胸はそれほど豊かではなかったのだけれど、胸の下で縛ったリボンのおかげでなんとかそこに収まってくれた。

それから深紅の服の侍女がドアの外に立っていた見張りの兵を部屋に招き入れ、鍵を使ってラナの足枷を外す。

ラナは侍女と兵士に囲まれながら長い螺旋階段を下り、塔の外へと出た。

月が高い位置でひっそりと輝き、暗闇を照らしている。

ここへ連れて来られたときは疲弊のあまり気がつかなかったけれど、どうやら塔は城の裏手にあるようで、ラナの鼻先には懐かしい潮の香りが微かに届いた。

兵士がついてきたのは屋外を歩くときだけで、城の裏口から中へ入ると、ラナは再び侍女たちと3人だけになった。
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