王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

ギルモア公国を回廊地帯が縦貫し、この国がナバ王国の属国となったのは、ほんの半年前のことだ。

小国ギルモアは10年以上前から度重なる東の帝国の侵略に苦しんでいた。

ナバの王立騎士団の援護を受けながらなんとかしのいできたのだが、長引く戦争に国力は日に日に衰え、国王はついに北の大国ナバの庇護下に入ることを決断したのだ。

ナバの王はギルモアの国王に公爵の位を与え、代わりに内陸国であったナバ王国は港とそこへ続く回廊を得た。


「なにも併合したわけじゃないさ。完全自治権はギルモア公爵にある」


エドワードの屁理屈に、ライアンは憤慨して息巻く。


「甲冑もつけていない王太子殿下が、悠々と馬に乗っていていい場所ではないということを申し上げているのです」


エドワードはナバ王国の王であるバレリオ・バロン・ナバと王妃テレーザの間に生まれた第一子で、正当な王位継承者に与えられるアルレオラ大公の位を名乗っている。

ライアンとて彼が腕の立つ騎士であることは知っていたが、近衛師団の副団長として、王太子を野放しにしておけるはずもなかった。

騎士団時代にいくつかの無鉄砲を共にしたのはライアンであったから、今になって手綱を握るのもライアンというわけである。


「そうカリカリするなよ、ライアン。俺たちはこれから花嫁を迎えに行くんだ。近頃は海賊も出没する危険な霧の海域を遥々越えて、未来の王妃がやって来るのに、夫が馬車でのんびり出迎えなんて格好つかないだろ」

「王太子が先陣を切って馬で到着するのもいかがなものかと存じますがね」


エドワードとスタニスラバ王国の王女との婚約が決まったのは、3ヶ月前のことだった。

オーロ海に浮かぶスタニスラバ王国は、他国との国交を持たない孤立した海国である。
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