王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
世界最強の海軍に、科学の進歩と豊かな資源を持ち、300年以上の鎖国を貫いている強国だが、その全貌は未だ誰にも掴めていない。
大陸に領土拡大の波が広がる今、どの国もこぞってかの豊かな王国との国交を結びたがっていた。
東の帝国が取るに足らない小さな国であったギルモアに手を伸ばしたのも、その先にスタニスラバ王国を見据えてのことであろう。
ギルモアはそのスタニスラバと唯一関わりのある国だったのだ。
スタニスラバ王国と北の大陸との間にある霧の深いジゼル海峡に、半島であるギルモアの商船がときどき迷い込んでしまうのを、彼らの軍艦が拾って送り届けてくれる。
ギルモアは形式上ナバの配下に置かれることになったが、その助け船を断つわけにはいかない。
そんな経緯があって、ナバとスタニスラバの友好同盟を結ぶ話が持ち上がった。
この同盟は、エドワードとラナの結婚を持って完成する。
「それはそうと、俺の花嫁はどんな女性だと思う?」
エドワードは街道を馬で駆けながら、古い刀傷を持つ知己の横顔を見た。
彼はまだ婚約者の顔を知らない。
海の向こうの孤立した強国とは確立された連絡手段もなく、肖像画を送ってもらうことも間に合わなかったのだ。
「さあ? 国王陛下が、条約の締結よりも王女との婚約を取りつける方に苦労したとおっしゃっておりました」
「皆に溺愛される美姫らしい。甘やかされて泣くばかりの女性は苦手なんだけどな」
「まあ、子猫より重たいものなど持ったこともないご令嬢であることは確かでしょうね」
花嫁の容姿にはさして興味もなさそうなライアンの言い草に、エドワードも内心では同意した。