王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
王女は内心慌てふためきながら、ふたりに背を向けて隠し通路を走り出した。
それから自分自身もそれを口内に入れたことを思い出してぞっとしたので、身にまとったレースの端で一応念入りに口元を拭き取った。
来た道をそのまま戻っては見張りの兵士が立っていることを知っていたため、ラナはとりあえず真っ暗な廊下の壁に左手を添えて先へ進んでいる。
すると道が途中で左へ折れた。
これが分かれ道か十字路かただの曲がり角かはわからなかったけれど、迷っている暇はない。
ラナは壁に従い、素直に左へ曲がった。
しばらく歩くと潮の香りが強くなっていき、微かだが波の音も聞こえるようだった。
(出口があるのかもしれないわ)
ラナは自分を勇気づけ、さらに足を急ぐ。
いよいよ長い隠し通路に終わりが見え、その向こうには淡い蝋燭の灯りが揺らいでいた。
ラナはつい喜びのあまり飛び出しそうになったが、男の低い話し声が聞こえたので、慌てて足を止める。
壁に背をつけて慎重に外を覗くと、そこは城壁の中の岬の陰に作られた船着場のようだった。
ラナの知っている軍艦に比べると一回りは小型の船が錨を下ろしており、男たちが木箱に入った荷物を次々に船の中に運び入れていく。
(あれは……海賊船ではないかしら)
ラナは目を細めて様子を観察する。
帆は畳まれているが、見張り台の上に掲げられた旗は黒の布にドクロと十字だ。
実際海賊船と遭遇したことはない彼女だけれど、冒険物語に出てくる海賊の旗は大抵ドクロと相場は決まっている。