王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「それじゃ、ここにサインを頼みますぜ」


頭に布を巻いた男がひとり、通路の入り口に近い壁際のほうに寄ってきた。

ラナは気がつかれないように一度身を隠し、再びそっと顔を覗かせてみる。

そして海賊の男から紙の束を受け取った者を目にし、ぽかんと口を開けた。

そこに立っていたのは、特に信頼を置いているたったふたりの兵士を伴った、バルバーニ皇帝のアルベルトだ。

(どういうことかしら。バルバーニは海賊と取引をしているの?)

アルベルトは海賊の男に手渡された商品の一覧表にサッと目を通し、2枚の紙に素早くサインをする。

そのうちの1枚を男に突き返した。


「こちらさんでいただく武器は性能がいいんですよ。普通の海賊にゃあ高価で手が出ないがね。南の大陸の葉っぱってのはそんなにいいものなんですかい?」

「口を慎め。お前たちはただ私に従ってそれを運んでくれば良い」


皇帝をおちょくるような顔をした海賊の男はこれみよがしに口を閉じ、じゃらんと音のする重たそうな小袋をアルベルトに渡した。

海賊たちは荷物を積み終えると速やかに船に乗り込み、夜の帳に紛れて海へ出て行く。

ラナは息を飲んでその光景を見守っていた。

(ここ数年オーロ海をうろついていた海賊船は、バルバーニの手先だったのね。あの海賊たちに麻薬を運ばせているのだわ。そうすれば証拠が残らないもの)

これこそ、エドワードたちが抑えたかった現場のはずだ。

ラナはなんとか証拠になるものを残せないかと考えを巡らせる。
< 132 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop