王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
そうしている間にアルベルトが忌々しげに口を開いた。
「まったく。海賊のくせに毎回サインを求めるなど、狭量な男よ。南の大陸の葉が良いものかだと? 馬鹿めが。私がこのような端た金のためにあんな小物と取引をするとでも思っているのか」
腹立ちを堪えきれなくなったのか、海賊に渡された紙の束と小袋を勢い良く後方へ放る。
紙切れは海風に煽られてバサリと高く舞い上がり、小袋の中からは大量の銀貨が転がり出た。
「あの王女を使ってスタニスラバ海軍を我が手中に収めれば、真っ先に駆除されるのは愚かな海賊共だ」
アルベルトがそのままラナのいる隠し通路とは反対の方向へ歩いていったので、兵士たちはひとりが彼を追いかけ、ひとりは散らばった紙と銀貨を拾い集める。
ラナは意を決し、出入り口からこっそりと船着場へ出た。
そしてアルベルトとは反対方向へ足を向ける傍ら、地面に散らばった書類と銀貨を拾っていく。
(これがエドワード様たちの役に立てばいいのだけど)
例によって隠し場所がなかったので、紙は胸元に詰め込み、銀貨は手のひらいっぱいに握って走った。
それから彼女は城の裏手を通って西の方角へ進んでいたが、しばらく行くと背の高い城壁へ行き当たった。
側に梯子はないし、どうやっても壁を登れそうにない。
城の後方には城壁はなく、そのまま海へ落ちる絶壁となっていたが、いくら故郷の海水路へ飛び込むのが得意なラナでも、この闇の中海へ入ってはどこまで泳げるかわからなかった。