王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
ラナはこんなことを言い合っている場合ではないと気がつき、隊商の若頭に縋りついて頼み込む。
「ねえ、マクシム。お願いがあるの。どうか私を城壁の外へ出してほしいのよ。私、ナバへ帰りたいの」
隊商の男たちはキョトンとして顔を見合わせる。
彼らはラナをここへ連れてきた張本人なのに、今度は連れ出してほしいと依頼をされているようだ。
なんだか妙なことではあったが、彼らは流浪の商人である。
王女誘拐の褒美として金も高価な布も宝石もたくさんもらったし、酒や馳走には腹がいっぱいだった。
次の客人がたとえどこの誰でも、金に見合った仕事をするまで。
「報酬は?」
若頭が片眉を引き上げて訊ねる。
今回ラナは薄いレースの衣服以外なにも身につけていなかったので、両手に握った銀貨を差し出した。
「これをあげるわ」
「こりゃすげえや! 気前がいいな」
そういうわけで、隊商はすぐに荷物をまとめ始めた。
ラナは大きめの木箱の中に身体を折って詰め込まれる。
その上から布をかけられ、ラクダの背に他の荷物と一緒に積まれた。
幸い城の中ではまだ騒ぎにはなっていないものの、そろそろ兵士たちがラナを探して動き出す頃合いだろう。
隊商は急ぎつつも密やかに皇城を出発したが、城壁門のところに立っていたふたりの見張りの兵士に止められた。