王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「なんだお前たち、こんな夜中に出て行くのか?」

「そうさ。俺たちは流浪の商人なんだ。報酬はがっぽりいただいたんで、次の客人を探すのさ」


マクシムは軽い調子で答えたが、門の兵士は顔をしかめる。


「そんな報告は受けていないぞ」

「そりゃそうだろうよ。俺たちゃ気ままなんでね、さっき決めたことだ」


見張りの兵士はふたりで顔を見合わせた。
そして男たちが引くラクダを指して言う。


「荷物を見せろ」

「いいけど、ここに積んであるのは皇帝様にもらった褒美だぜ? 別に城から盗んだわけじゃないからな」


マクシムは商品に触れられることが率直に気に入らなかったので、唇を尖らせた。

兵士たちがひとつひとつの積み荷に手を触れて確認する。

ラナは木箱の中で息を潜め、心臓の音が漏れ聞こえないように強く胸を押さえた。

箱の中に隠れているラナには知らぬことであったが、見張りの兵士のひとりは、フベルトスに襲われかけたラナを救ってくれた男だった。

赤みがかったダークブロンドの髪の男が、ラナの入った木箱に手をかけて蓋を開ける。

ラナは静かに息を止めた。

彼女の上には布がかけられていたが、不運なことに、ラクダの背に揺られたせいで布の隙間から豊かな金色の髪が覗いていた。

男はギョッとして目を見開く。

なんとなく伝え聞いてはいたものの、とんでもないお転婆な姫君らしい。

彼はどうしたものかと一瞬逡巡したが、黙って木箱の蓋を閉めてやった。

ラナはホッと息を吐く。

(よかった。見つからなかったみたい)
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