王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです
どうにか城壁を出た一行は、なるべく急ぎ足で市街地を抜け、皇都を出たところで馬と荷馬車を調達した。
王女が城壁の中からいなくなっていることが知れれば、真っ先に疑われるのは真夜中に城を発った彼らだ。
衣服を着替え、荷物を詰め替えてから、ナバへと続くセレナ街道に入る。
ラクダよりはスピードが出せるので、翌日の午前中には国境付近まで辿り着いた。
しかしなにもかもがそう上手くいくわけもなく、街道の国境では既にバルバーニ兵による検問が敷かれていた。
マクシムは舌打ちをして馬車を止めさせた。
荷台に積まれていたラナは、急に止まった馬車を不思議に思って首を傾げる。
日の光が僅かに透けるくらいの木箱の中では外の状況がわからなかったし、凝り固まった身体はそこら中が痛い。
(もうナバへ着いたのかしら)
しかしそうではなかったということは、聞こえてきた会話ですぐにわかった。
「おい、貴様ら。なぜ引き返す。我々は人探しをしているだけだ。調べを受けてとっとと国境を通過しろ」
ラナはハッと息を飲んで口を両手で塞ぐ。
バルバーニの陸軍兵士だ。
ラナを探している。
おそらく彼女の脱走を知り、隊商が馬車に乗り換えている間に一行を追い越してここで待っていたのだ。
この様子では、どこから国を抜けようとしても検問に行き合わずにはいられないのだろう。
「いやいや、ちょっと忘れ物を思い出したのさ。そいつを取りに戻るだけだよ」
マクシムはいつもの調子で答えたが、今度の兵士たちは王女の失踪を知っていたので、易々とこれを見逃してはくれなかった。