王太子様は無自覚!?溺愛症候群なんです

「怪しいな。荷物を調べろ」


壮年の兵士が言うと、側にいた数人の部下たちが一斉に隊商の荷物に手をかける。


「おいおい、もっと丁寧に扱ってくれよ」


馬を降りたマクシムは憤慨して兵士たちに言った。

赤いチュニックを着た男たちは彼の言うことになど耳を貸さず、荷台に積まれた荷物を次々と道端に下ろし始める。


「ちぇっ」


マクシムはふてくされたように地面を蹴り、兵士たちから距離を取るふりをして、ラナが詰め込まれている木箱の側で腰を下ろした。

誰にも気がつかれないよう、声を低くして囁く。


「王女様、ここからはちょっとやばそうだ」


ラナはこれを聞き、箱の中で密かに頷いた。

隊商の男たちがさりげなくマクシムの周りに立ち、木箱が兵士たちの目に触れぬようにしてくれる。

マクシムが片腕で音もなく蓋を開けたので、ラナはそっとそこから抜け出した。

太陽の光に目が眩む。

夜中動かずにいた薄着の身体は冷え切っていたので、暑い日差しがちょうどよかった。

ラナの背後には、セレナ街道を囲む木々が鬱蒼と茂っている。


「マクシム、みんな。どうもありがとう。次にナバへ来たときには、きっとまた会いましょうね」


ラナは背を向けたままの隊商の男たちに静かな声で別れを告げた。

彼らの荷物をあさっている兵士に気がつかれぬよう、ひっそりと林の中に足を踏み入れる。
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